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Loulou Graffiti ルル・グラフィティ/パリの大泥棒

フランス映画 (1992)

ジャン・ヴァンクヮリィ(Jan Vancoillie)がタイトル・ロールのルル・グラフィティを演じるコミカルな泥棒映画。泥棒役がジャン・レノ、発明家役がフランスでは著名なアネモネ。にもかかわらず、本国フランスでもVHSすら手に入らない。IMDbでも52人しか投票しておらず、しかも評価は4.9と低い。確かに名作とは言えないが、歴代のフランスの子役でも可愛らしさでベスト5に入るジャン・ヴァンクヮリィの魅力が楽しめるという点では、貴重な作品だ。撮影時11才。映画初出演で主演。その後は、ずっとテレビが続くので、彼の姿を見ることのできる唯一の映画でもある。

物語は、ラジコン・ヘリを開発する女性と、知能犯的な泥棒(ボス)と、孤児院から逃げ出した12才のルルの3人が絡み合って進行する。女性は、上司の部長にラジコン・ヘリのアイディアを盗まれ、おまけに解雇。同棲していた愛人にも逃げられ、セーヌ河岸で呆然としている。そこに現れたルル。鍵を忘れてアパートに入れなくなった女性を、鍵開け技術で助け、持ち前の愛くるしさでアパートに泊めてもらう。翌朝姿を消したルルは、面倒を見てくれているボスと一緒に、外国旅行中の金持ちのマンションから家具・調度品の一切を盗み出す。パリに戻ると危ないのだが、ルルは、ボスの反対を押し切って女性のアパートに戻る。そして、ラジコン・ヘリの開発を手伝う。そうこうしているうちに、女性は、部長がラジコン・ヘリの発表会を行うとの情報をつかむ。ルルの介在で、ボスの助けを借り、発表会に割り込む形で、自作のヘリで部長のヘリに挑戦する女性。結末は、意外な方向へ。なお、この映画には、フランス語だけでなく一切の字幕ファイル(srt)が存在しない。従って、VHSの日本語字幕しかないので、以下のあらすじでは、台詞の紹介は最小限にとどめる。

フランスの可愛い子役はシリアス・ドラマ系ばかりなので、コメディ系はジャン・ヴァンクヮリィ唯一人。表情も多彩で、演技も自然、エンディング・クレジットに流れる曲まで歌っている。映画はこれ1作しかない。しかもVHSすら入手困難。残念な状況だ。


あらすじ

夜仕事をしていて、そのまま寝てしまった女性。目が覚めたら、9時15分に部長と会うという約束の時間を、既に2分過ぎている。慌てて同棲していた男性に声をかけるが、ベッドには誰もいない。あったのは置手紙だけ。とりあえず大急ぎでアパートを飛び出る。一方、会社では、社長も交えて、女性が開発した「曲芸師」という高性能のラジコン・ヘリの商品化が決定されている。担当部長は、女性がいないことをいいことに、すべてを自分の成果にしてしまう。1時間以上遅刻して会社に着いた女性。部長の部屋に直行するが、ラジコン・ヘリの企画は打ち切り〔これは嘘〕、報酬は払っているので成果は会社のもの、会社はクビと申し渡される。帰宅途中で、置手紙を読むと、それは「さよなら」の手紙だった。解雇と失恋。二重の晴天の霹靂に激しく動揺する女性。夜遅く、セーヌの河岸に佇み手紙を破り捨て、破片が流れていくのをぼんやり見ていると、いきなり、死骸でも流れているのかと訊かれる。声をかけたのは、こんな時間にこんな場所にいてはいけない小さな男の子。しかも、話しかける内容が、近くにいるホームレスから聞いた言葉とあって、女性は警戒して、「一人でいたい。放っといて」と無視する。それでも後を付いてくるので、「子供は寝る時間よ」と、とりつくしまもないのだが…
  
  

しかし、話している最中にポケットに手を突っ込み、鍵がないことに気付く。今朝、慌ててアパートを飛び出したので、鍵を忘れてしまったのだ〔自動ロック〕。解雇と失恋に加え、アパートにも入れない。その時、少年が、3分の1の料金で開けてやると申し出る。アパートまで同行し、簡単に開けてやる少年。父がカギ屋だったと言ってごまかす〔その前に、今は孤児院にいると言っているので、辻褄を合わせなくてはならない〕。部屋に入ってきた少年は、いっぱい置いてあるオモチャに興味津々。すべて、女性が作ったものなので、作り手としては興味をもってもらえば満足だし、相手は可愛い子供ときている。太陽と地球と月の関係を示す模型に惹かれる少年。妙に話が合う。いろいろ見せているうちに、少年はソファで眠り込んでしまうが、追い出すようなことをせず、優しく毛布でくるんでキスする。
  
  

女性が朝起きてくると、少年の姿がない。がっかりする。少年は、アパートで夜更かししたせいか、遅刻して新聞の印刷所に到着。ボスの命令で、詐欺に使うため、差込1枚(4ページ分)の紙面を印刷するよう頼んであったのだ。「手数料を上げてくれ」との伝言と一緒に紙面を渡される。印刷所の裏口から出たところで、遅いので自分で取りに来たボスとかち合い、「遅いぞ」と叱られる。昨夜 何をやっていたのかと訊かれ、「背が高くてブルネットで真面目な人」と一緒だったと言うと、ボスは「小柄で金髪で危険なタイプ」がいいと言って茶化す。そして、本でも読めといって、サン=テグジュペリの本を渡される。このボスは、古い飛行機が好きなので当然、名作『夜間飛行』だ。
  
  

一行、ボスとNo.2と少年の3人は、大型のバン・トラックにで乗り込む。窃盗団はこの3人だけ。あとは、臨時雇いの荷物運び5人。トラックは、高級アパート地区に向かう。まず、少年が降りて、管理人の郵便ボックスに入っている朝刊の3枚目を抜き取り、代りに持ってきた3枚目と差し替え、またボックスに戻す。もちろん、ボックスには鍵が掛かっている。こうして準備が完了すると、ボスが、留守中のマンションの主人のふりをして、管理人に電話をかけ、スキャンダルでスイスに移るので家財を運び出す、とだけ言って切る。そこにボスが、今度は運送会社の社長として現れ、管理人の女性に、①荷物を取りに来た、②新聞を読んでいないのか、と話しかける。新聞には、マンションの主人の長男の顔が大きく掲載され、「児童買春組織の首謀者」という見出しが躍っている。なるほどと納得する管理人。ボス一行は、室内の美術品や家具の一切をトラックに運び込み、速やかにずらかる。もちろん、顔は見られているが、それが承知の上だ。
  
  

女性が、アパートに戻ると、少年が戻ってきている。そして、昨日もらった鍵明け台を、友達だからと言って返す。女性は、お礼を言ってまたキス。完全に打ち解けた感じだ。喉が渇いたからコーラが欲しいという少年に、女性が持って来たのはザクロ・ジュース。子供扱いに不満な少年は、外で夕食をと誘う。行った先は、騒々しいファースト・フード店。「男を紹介しょうか」と持ちかけあきれられるが、構わず平気で年令を聞く。34歳と聞いて「ウソだよね」。お世辞も上手い。そして、服がダサイといい、さっきボスが言った、「危険な感じの金髪」を勧める。夜も更けて、少年が住んでいるという施設に、女性が車で連れて行く。門の前にパトカーが停まったので、慌ててシートを倒す少年。シートの具合を試したと言ってごまかす。そして、お休みでまたキス。
  
  
  

翌日、トラックで郊外の故買屋の倉庫に乗り付ける。故買屋は、まだ来ていない。そこで、ボスは、少年に、しばらくパリを避けて行動を共にしろと勧める。しかし、女性が気に入ってしまった少年は、紹介するから会って見ろとボスに勧める。兄貴が刑務所にいるから気安いとも。しかし、実際には、女性の兄は司祭。神に一生囚われの身と嘆いたのを、少年が勝手に終身犯と誤解しただけだ。どのみち気のないボスは、「かえって危ない」と否定的だ。
  
  

パリでは、盗難の翌日帰国したマンションの一家が、警察を呼んで大騒ぎ。しかし、ぶっきらぼうな主人の態度に、無愛想に対応する刑事。コメディだからいいが、少し不親切すぎないかと思ってしまう。一方、ボスは、ようやく現れた故買屋から、大金を渡される。そして、家具があり過ぎるから、善意で掃除してやったと、ユーモアたっぷりに語る。さらに、泥棒稼業はもうやめるとも。パリでは、管理人の供述で似顔絵が出来上がり、少年はルイ・グラフィティ、通称ルル、12歳。半年前に施設から逃亡、と分かってしまう。さっそく厚生省との連携を指示する刑事。
  
  

ボスの指示に背いて危険なパリに戻ったルル。半分完成したラジコン・ヘリのカメラに大喜び。自分の顔が、操縦用にヘリの正面に付けたカメラで、目の前TVに映るのを嬉しそうに見てはしゃぐ。同時に、女性の技術力にも感心する。「天才だね。発明は誰に?」と訊くと、「父よ」という返事。その言葉に顔を曇らせるルル。「僕には誰もいなかった」。天涯孤独の孤児なのだ。話題を切り替え、「頑張って」と言って去って行くルル。その後、女性は別の会社を訪れラジコン・ヘリを売り込む。そして、社内で検討するので半月待てと言われる。この時相手になる男性は、『僕は、パリに恋をする』でダメ社員ぶりを見事に演じていたコメディアンのパトリック・ティムシットだ。
  
  

湖畔のアジトの家では、ルルの誕生日を祝っている。ロウソクが12本立っている。吹き消して、ボスからプレゼントを渡されるが、開けてみるとパスポート。つまり、フランスから「ずらかる」ことを意味している。しかも、「半月後にな」とボスが言う。困った顔をするルル。実はラジコン・ヘリの完成まで手伝う約束をしてきたのだ。勝手な約束を責めるボス。取り消しを迫り、拒否するルル。一方的に叱られるので、思わず「ひきょうだよ」と言って叩かれる。ルルは、無言で席を立って出て行く。そして、ヒッチハイクで真夜中にパリに辿り着き、女性のアパートのドアを叩く。後見人のところに行こうとしたが不在だったと嘘を付き、入れてもらう。中に入ると、所狭しと置いてあった道具やおもちゃが何一つない。ラジコン・ヘリを完成させるための資金に全部売ったと言われ、完成した機体を見せられる。
  
  
  

翌日はいよいよ試験飛行。操縦するのはルルだ。モニターを見ながら、セーヌ川の上を、自由自在にあやつる。素晴らしい性能のラジコン・ヘリだ。操縦の腕も見事。女性から、テスト・パイロットに任命される。
  
  
  

橋の下で、シャンパンで乾杯。女性が、ルルに名前のことを訊く。ルルは、名前は修道女がめちゃめちゃに決めていたと思い出を語る。「僕が生まれた日は、ドアに落書きされて怒ってた。それで、Graffiti(落書き)と」「ルイは、ナポレオンから」〔Graffitiは英語でも落書きを意味する。ルイは、ナポレオンの弟の名前〕。そして、里子に出されても、すぐ戻った話す〔後の警察の話で、何と18回も〕。そして、施設で仲間とトランプをしているシーンが挿入されるが、カードをごまかしてしらばくれている顔がルルらしい。酔っ払ってしまったルルは、先日の施設まで車で送ってもらい、入るふりをして消える。しかし、翌日、心配した女性が施設を訪ねると、そこは老人ホームだった。
  
  

厚生省の担当部局から警察に一報が入り、さっそく刑事が女性のアパートに押しかける。手配用の似顔絵を見せて本人だと確認し、ルルを庇うそぶりを見せる女性を、「未成年者誘拐」「犯罪者幇助」などで逮捕できると脅した上で、尾行を付けて泳がす方針を採用。女性は、刑事の思惑通り、さっそくセーヌ河岸へ出向き、ルルと相談する。「何をしゃべった?」とルルに訊かれ、「君は謎だもの。しゃべりようがない」。そして、「なぜ 嘘を?」と問い詰める。ルルは、「ウソじゃない。過去は関係ない」〔たぶん、日本語字幕が違っている〕と答える。そして、女性のそれ以上の糾弾を避けるためか、注意を尾行の男にそらす。そして、あれは警官だと教え、メトロに乗ってまいてやろうと提案する。
  
  
  

尾行をまいた後、2人は、一路アジトへ向かう。車の中で、ルル:「あんたのお陰で足がついちゃった」。女性:「お陰で捜査状況がつかめたでしょ」と応酬。そして、女性は、ボスに捜査の進展を警告したら縁を切れと迫る。それに対し、ルルは、ボスは言い人だと庇う。アジトに着くと、ルルは、ボスに、「追われてる」と言うが、冗談だろと笑われる。余裕しゃくしゃくだ。しかし、女性が、警察に追われているのはあなただけで、自分たちは警告に来たと言うと、表情が変わる。車まで見送りにきたルルに、女性は、会って失望したと話す。しかし、観ている限り、女性の方も感じが悪かったので、結局、ルルが間に挟まって嫌な思いをしただけ。この部分の日本語字幕は筋が通っていないため、正確に理解できた訳ではないが。
  
  

女性は、パリに向かう途中、ルルのことが心配になり引き返す。アジトに戻るが、誰もいない。部屋の中にある写真を何気なく見ると、そこには、スチュワーデスの女性の写真と、墜落事故の記事がある。この女性がボスの恋人なのか、最初の頃ルルに話していたように妹なのかは、よく分からない。ボスが独身を通し、泥棒になったのは、恋人を失った心の痛手からと思ったほうが分かりやすい。しかし、ルルに嘘をついたとも考えにくい。さて、遠くでエンジンの音が聴こえるので、女性は、アジトを出て音のする方に歩いていく。湖畔には第二次大戦時代の戦闘用の水上飛行機が係留されていた。操縦席にボスとNo.2が乗り、ルルは前方の機銃手専用の区画だ。これが、ボスの好きな戦闘ごっこ。案外子供っぽい。ルルは、うっかり眠ってしまい、拡声器で叩き起こされて、しどろもどろ。そんなルルも可愛い。
  
  

ボスが朝ジョギングをしていると、車の中で寝ている女性を見つける。結局パリには帰らなかったところが気に入り、アジトに招じ入れる。しかし、英国式の朝食を出そうとすると、「昨夜も英国空軍ごっこ」をしていたと、好意的とは言えない指摘。その後も、非難の応酬が続くが、女性が、自分のラジコン・ヘリは実現に向けて動いていることを証明しようと、以前連絡した会社に電話をかける。すると、同じ商品名の特許の侵害と罵られ、明日、例の部長が「曲芸師」の発表会をやると言ってガチャリ。卑怯な部長のやり方に怒る女性。ルルは、助けてあげようとボスに持ちかける。最初は及び腰だったボスだが、結局、助けてやることに。女性の車を置きっ放しにした理由は不明だが、4人でトラックに乗りパリへと向かう。しかし、そのトラックが、交通警察の監視カメラに写り、居場所を突き止めらてしまう。
  
  

関係者の見守る中、宮殿の室内でラジコン・ヘリを飛ばしていた部長。ヘリの搭載カメラのモニター画面にもう1機のヘリが映り、さらにクビにした女性も映る。社長に説明を求められた部長は、ヘリの実力を見せようと、ヘリを屋外の庭園へと飛ばす。そこからは2機のヘリの競争。当然、女性のヘリの方が性能がいいので、スピード・操縦性で勝ち、相手のヘリは木に激突して終わり。操縦していたルルは大喜び。4人で「やった!」。しかし、その時、大勢の警官隊が到着するのが窓から見えた。
  
  

一方、部長は、社長から盗作かと指摘され、無言で席を立つと、4人のいる方に走る。途中で、宮殿内のショーケースに展示してあった拳銃を取り上げ、女性に対し、100万フランを渡すから手を引けと強要。拒絶する女性。そこに、ボスが顔を出す。部長に銃を渡すよう要求。手を伸ばして銃に触れかけた時、銃が発射され、ボスは腹部を撃たれ床に倒れる。銃声を聞き、駆けつけた警官に「銃が暴発した」と主張する部長。
  
  

救急車に搬送されるボス。付き添うルル。「最期くらい一緒に」と頼むボスに、刑事もルルの救急車への同乗を認める。一方、女性は、社長から一緒にやろうと申し込まれるが、断って救急車に乗り込む。警察の先導で走り出す救急車。しかし、ボスの被弾は偽装だった。救急車を乗っ取り、一路アジトに向かうボスたち。この辺りは、脚本が大きく破綻している。このストーリーのポイントは、ボスが拳銃で撃たれ、腹部に赤いシミが出るような仕掛けを予めセットしておくことが必要な点。唯一の可能性としては、警官に撃たれたフリをして逃げるつもりが、部長が拳銃を取り出したので利用したという線もあり得る。仮にそうだとしても、展示してあった銃に弾が込められていたとは思えない。それに、救急車にルル以外にNo.2を乗せたのはあり得ない。救急車で異変が起こっているのに、警察の気付くのが遅すぎる。そもそも、警官隊が来ること自体、予測できたとは思えない… とまあ、疑問点を挙げればきりがないが、この映画は、ルルを観るためだけに存在すると割り切れば、すべて目をつむればいい。どうせ、ナンセンス・コメディなのだから。最後に、4人は水上飛行機で、追ってきた刑事を振り切って飛び立つ。
  
  
  

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